コラム

中小企業診断士が語る!知れば得するノウハウ集
松平 竹央

皆さま、こんにちは。一般社団法人城西コンサルタントグループ(JCG)の松平です。

今回(第18回)は、ネーミングと商標登録についての後編です。 新年度入りしましたので、様々な補助金・助成金の施策も動き始めています。 商標権を含む、知的財産権に関する補助金・助成金につきましてもご紹介します。

Vol.18 よいネーミングと商標登録(後編)

前回は住宅業界に絡めて、商標登録の基礎知識をお伝えしました。せっかくよいネーミングを自社で考えついても、後からそれを知った他人に勝手に使われてしまうのであれば困ります。
これとは反対の立場で、他人がよいネーミングを行っているのを知って、自社がそれを無断で使用すると他人の商標権を侵害してしまい、損害賠償をしなければならないことなどが起こり得ます。
従いまして、ネーミングと商標登録はセットで考えて頂くことをお勧めします。

1.よいネーミングの要件

皆さまは、住宅産業におけるよいネーミングの例として、何が思い浮かびますか? 私は、「新築そっくりさん」(住友不動産株式会社)、「リハウス」(三井不動産リアルティ株式会社)などを思い浮かべます。

よいネーミングの要件を大きく3つ挙げますと、①顧客に好まれること、②商品コンセプトが分かること、③商標権が取得できること、です。「新築そっくりさん」はこの要件を満たしていると思いますし、このネーミングだけで優れた広告効果がありそうな印象です。

少し違う切り口では、次の要素を備えることが大切です。
①呼びやすい、②読みやすい、③覚えやすい、④聞きやすい、⑤連想しやすい、⑥親しみやすいこと、です。
全てを兼ね揃えるのは難しいですので、ネーミングを考えるにあたっては、こうした要素のいくつかを満たすように検討されるとよいでしょう。

また、企業側の自己満足に終わらないように、顧客に感じて欲しいブランドイメージを考慮しながら検討することが大切です。単に面白い名前を思いついただけでは、その名称によって適切にブランディングを行っていけるとは限りません。

例えば、以前に私が関わった事例として、「保守一徹」という商品名称がありました。この商品は、24時間稼働するようなプラント(工場)向けのメンテナンスサービスとソフトウェア組み合わせたものでした。この商品におけるネーミングの発想法としては、熱血野球マンガ「巨人の星」の登場人物である「星一徹」から着想した「パロディ系」でした。面白くて覚えてもらいやすいネーミングである反面、商品に求められるイメージには相応しくないと賛否が分かれました。

2.よいネーミングの発想法

ネーミングの発想法をいくつかご紹介します。これに照らして、本コラムの読者の皆様の商品やサービスに、自社ならではの名称をご検討されてはいかがでしょうか。

発想法 事例
(1)要素を組み合わせる 新築そっくりさん、太陽の家、住まいNAVI、
注文住宅ナビ、不動産仲介士、住宅診断士、東京スカイツリー
(2)商品のウリ・コンセプトを強調する 住まいの図書館、住まいの参観日、一番搾り、通勤快足、俺のフレンチ
(3)外国語を用いる(造語を含む) リハウス、ライオンズマンション、グランドメゾン、クラウン、セフィーロ
(4)ありのままを表現する 新築そっくりさん、写ルンです、超立体
(5)パロディ系 東京カブレ、いきなりステーキ
(6)音の響きで特徴を出す きゃりーぱみゅぱみゅ、バザ-ルでござ-る

上記の内、「(1)要素を組み合わせる」という方法が、最もオーソドックスな発想法だと思います。2つの単語を組み合わせて冒頭箇所で述べました、よいネーミングの要件を満たすように考えるのです。

文字だけの名称からなる登録商標を顧客層に浸透することができれば、競合にとってはビジネスが行いにくくなります。そして自社が有利になります。例えば「新築そっくりさん」がその例です。
文字だけでは登録商標にできない場合には、社名を組み合わせたり、ロゴを作成したり、図形を組み合わせるなどすれば登録商標にできる場合があります。 例えば次のようなマークです。

積水ハウスリフォーム     三井のリフォーム

ブランドイメージを訴求するためのインパクトが弱い場合にも、社名やロゴを組み合わせて登録する場合があります。
例えば次のようなマークです。「リハウス」という言葉は、三井不動産リアルティ株式会社の造語です。「リハウス」という名称は、同社の登録商標となっています。しかしながら「リハウス」という名称は広く普及したために、どの企業のものであるのか分からない一般名称のように受け取られてしまうことが多くなっているかも知れません。そこで、同社では「三井の」という言葉を組み合わせ、識別力のあるマークに仕立てています。

三井のリハウス

登録商標において指定されている商品・サービス、またはそれに類似する商品・サービスに、その登録商標の権利者に無断でその商標を使用することは商標権を侵害する行為として禁止されています。
この場合、商標権者は侵害行為を行っている者に対して商標の使用を止めるように請求し、その者の侵害行為によって損害が生じた場合には損害賠償等の請求をすることができます。

商標権を巡る事件としては、北海道のお菓子として有名な「白い恋人」の石屋製菓株式会社が吉本興業の「面白い恋人」について、商標権を侵害するとして裁判となった事件がよく知られています。この裁判は和解で妥結しましたが、「白い恋人」の石屋製菓側の主張が受け入れられたと考えられています。

冒頭部で述べました、よいネーミングの要件として、「商標権が取得できること」を挙げました。自社の商品名に関して商標権を有していればその商品名のブランド価値を損なうような行為に対しては、対抗措置を講じることができるのです。

3.考え付いた名称が商標登録できるか調査する

一般名称や、他の商品やサービスとの識別性に欠ける名称は、商標登録することができません。
また、すでに他人の登録商標になっているもの及びそれに似た名称も、商標登録されません。

ご自身で考えた名称が、他人の登録商標になっているか、または商標登録出願がされているかについては、特許庁のデータベース「J-PlatPat(ジェイ・プラットパット)」で調査することができます。
「J-PlatPat」でネット検索して、トップ画面を開きますと、その画面から簡易検索することができます。

この検索結果として何もヒットしなかった、すなわち他人の登録商標になっておらず、商標登録出願もされていないという結果であったというだけで、その名称が商標登録できるとは限りませんが、一定程度の確からしさを調べることができます。

より詳しい調査につきましては、特許事務所や後述します、「知財総合支援窓口」などに相談されるといいでしょう。

J-PlatPat(ジェイ・プラットパット)での検索方法

4.商標登録出願のための補助金・助成金

商標権を含む知的財産権を取得するために利用できる補助金は大きく、商品開発を支援する目的の補助金(ものづくり補助金など)と、知的財産権の取得を支援する目的の補助金に分かれます。
前者につきましては国や自治体による様々なものがありますが、後者につきましては、国によるものはほとんどありません。国の機関である特許庁に支払う手数料を、国の税金で補助するのは非効率だからと考えれば分かりやすいでしょう。その代り、特許料等の減免制度が設けられています。外国出願を支援する目的の補助金は、国によるものも毎年提供されています。

商標登録出願それ自体に利用できる補助金・助成金としては、自治体が用意したものがあります。
例えば下記のようなものです。

  • 知的財産権認証取得助成金(東京都足立区)
  • 産業財産権取得助成(東京都荒川区)
  • 知的財産権取得補助金(東京都板橋区)
  • 知的財産権の出願にかかる助成金(東京都江戸川区)
  • 知的所有権取得補助(東京都葛飾区)
  • 知的所有権活用支援事業(東京都北区)
  • 知的財産権取得支援(東京都江東区)
  • 知的財産権取得支援(東京都品川区)
  • 知的財産権取得補助金(東京都墨田区)
  • 知的財産権取得支援事業(東京都世田谷区)
  • 知的所有権取得支援事業(東京都台東区)
  • 産業財産権取得支援事業(東京都千代田区)
  • 産業財産権取得支援事業補助金(東京都港区)
  • 特許取得事業(東京都府中市)
  • 工業振興事業補助金(東京都三鷹市)
  • 産業財産権取得費補助金(埼玉県越谷市)
  • 産業財産権取得支援事業(埼玉県草加市)
  • 産業財産権取得事業(神奈川県綾瀬市)
  • 産業財産権取得事業(神奈川県鎌倉市)

こうした制度を用意しているかどうかは、自治体によってまちまちです。東京23区においても、こうした制度を用意している区とそうではない区があります。皆さまの事業エリアで利用可能なものがあるかどうかはネット検索等で確認してみて下さい。

これらの補助金・助成金は、申請額が予算額に達した時点で申込みの受付が終了するものが多いため、ご利用される場合には早めに検討されることをお勧め致します。  
中小企業の方のための知的財産権に関する相談窓口につきましては前回のコラムでもご紹介しましたが、「知財総合支援窓口」が全国に設置されています。

なお、ものづくり系の商品開発のための補助金・助成金でも、特許出願や商標登録出願に関する経費が対象となるものもあります。
例えば下記のようなものです。本コラムが公開されるタイミングでは募集が終了しているものもありますが、今後の活用の参考にして下さい。

  • ものづくり補助金(経済産業省)
  • 新製品・新技術開発助成金(東京都)
  • ものづくり産業支援事業補助金(東京都新宿区)
  • ものづくり技術・製品開発支援事業費補助金(埼玉県)

前回、そして今回のコラムをきっかけに、住宅ビジネスを行う皆さまの商品やサービスに対するネーミング、商標登録、ブランディングに対する関心を高めて頂き、皆さまの事業を是非、発展させて頂ければと思います。

 

「中小企業診断士が語る!知れば得するノウハウ集」バックナンバーコーナー
一般社団法人城西コンサルタントグループについて

一般社団法人城西コンサルタントグループ(JCG)は、中小企業診断士を中心に、税理士、社労士、弁護士など100名を超える会員で構成している経営コンサルタントのグループです。

中小企業庁認定の経営革新等支援機関として、中小企業・事業者様の創業、経営革新、経営改善、補助金申請支援、事業承継等のお手伝いをしております。

JCG Webサイト:http://jcg-net.com/
お問い合わせ先:info(アット)jcg-net.com (「アット」は「@」に置き換えて下さい)

ページ上部へ戻る